さてこのところ、少年の無差別殺人が立て続けに起きています。この無謀な行動にどうしてもその理由を聞かずには、人間の心理としては落ち着きません。不安を抱えたままではいられないからです。
私がこのニュースを聞いた時にまず思ったことは、「怒り」の処理の仕方を誤ってしまったのではないか?ということでした。如何せん、思春期において少年・少女が葛藤するのはいかに自己の感情をコントロールするかということです。その中でも「怒りのコントロール」には骨をおります。アンガー・マネージメントは若者たちにとって重要な課題なのです。
多くの大人が自分が思春期の時には、「何もかもメチャクチャにしてやりたい!」という凶暴ともとれる思いを抱いた経験があるのではないでしょうか。しかし、実際に行動を起こす人は少なく、やっても物を壊すとか、大声をあげるとか、何か代償行為でその怒りを発散しておしまい、とされた方のほうが多いでしょう。でも、彼らは実際に人を傷つけてしまった。そこに至ってしまうというのは、恐らく彼らの中で現実に人を殺めたらどうなるかという現実感が薄く、自分の中で蓄積されたイメージの世界:妄想的な世界に生きることに慣れてしまっていた、ということがあるのではないかと思います。現実感からの隔離そして逃避。
アンガーマネージメントはアメリカでは一般的にカウンセリングでおこなわれていて、私も実際に11歳や13歳の男の子たちを対象におこなっていました。確かに自分の怒りの感情をどうコントロールするか学ぶことにより、彼らも楽になります。ただ、根本的には何よりも家族からのサポートによる安定感を得ることが彼らの健康的な成長になるのだと思いました。つまりは、カウンセラーもその子どもにサポーターであり、「自分は支えられているのだ」と安心感を得ることにより、成長していけるのです。はたして、あの事件を起こしてしまった彼らにはどのくらいサポートがあったのでしょうか。
美輪明宏がテレビで「日本全体が犯罪が起きるような国に連鎖的になってきている」というコメントをしていました。そういえば、ユング心理学の第一人者、ジェームス・ヒルマンが 「A Terrible Love of War」の出版時の講演でこのようなことを言っていました。ある教師をしている青年が「自分の学校では生徒たちの暴力と争いがひどい。どうしたらよいものか。」それに対してヒルマンは、「近年、この世界では赤い色のイメージが横行している。つまり人々は赤い=戦いのイメージに占有されているのだ。自己の赤いイメージを消化しきれていないため、暴力に走る。日本やアジアの伝統武芸を見てみなさい。見事に赤のイメージを消化している。学ぶべき点があるのじゃないかな。」確かに、伝統武芸の真髄である哲学を学ぶことは本当の意味でのアンガーマネージメントにつながります。しかし、あの少年のうちの一人は確か弓道部だったはず。本当の意味での武芸の哲学を伝承し、学ぶシステムは存在しないということ?もし、ヒルマンが言うように、赤のイメージを消化するために日本の武芸が有効だとすれば、我々は大事なものを無くそうとしているのではないでしょうか。自己の文化を的確に深く理解し、よき所を推し進めていくことは国民としてすべき世界の常識ではないのでしょうか。



